チョコレートと爆弾

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チョコレートと爆弾

 チョコレートかと思ったら、それは爆弾だった。  朝、いつも通りに登校する。  昇降口でトイレみたいなスリッパに履き替え、見慣れた廊下を歩いて教室にたどり着いた。そこで目にしたのは気にしようとしないでも目立つ、ハッピーバレンタイン、女子一同と書かれた黒板だった。  よく見る市販の板チョコレートと、それから手作りであろうラッピングされたなにかが、教卓の上に山のように置かれていた。  まるで、ゲームセンターの触れたら崩れそうなお菓子みたいな状態だ。案の定、他の男子がつついて、なだれが起きた。そのせいで涼一の机の下にパラソルの形のチョコレートが転がった。けれど、あえて拾いはしなかった。  これが夢じゃない限り、今日はバレンタインデーである。  涼一は、先日くじ引きで運悪く引いてしまった一番前の席に座ったまま、学校指定の革の鞄にしまわれた重みを確かめた。さきほど幼馴染の凛々花に渡されたそれは、心配に反してなくなっておらず、カバンの中でコトリと軽い音を立てて、傾げた右から左へ移動した。どうやら夢ではなかったらしい。     
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