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エメドラちゃんとの初めての出会いがふと頭をよぎった。彼女は僕に「食べないよー」と言ったのだ。でもこいつは違う。こいつは間違い無く僕を食べるだろう。しかも少しずつ少しずつ、時間をかけてゆっくり食べるつもりだ。それはとても痛いに違いない。
「いいいいいい、いやーやめてー」
僕は自分が食べられるところを想像して絶望の声を上げた。
「シャアアァァァァ」
化け物のアギトが僕の目の前に迫る。
「ああああああ」
僕は腕を突き出して、化け物の牙の一撃を何とか逃れようとした。
ガチャンッ
目の前で大きな音がして、僕のからだはフワリとした浮遊感を感じた。僕の頭が体から切り離されて宙を舞っている感覚だろうか?
「ふう、よかった~間に合いました~」
「ほんと、ヒヤヒヤしたぜ」
エメドラちゃんとブラカスちゃんが僕のからだを砂から引っ張り上げていた。二人は突き出した僕の腕を持って宙を浮いていた。
「シャアアアアアア」
獲物を横取りされた蟻地獄が、下からハサミをガチャガチャさせて怒っている声が聞こえた。
「ああ、エメドラちゃんブラカスちゃん、やっぱり来てくれたんだね」
僕は二人の首にしがみついた。
「わわわ、そんな風にされたらわたし、上手に飛べません~」エメドラちゃんの声がした。
「おいおい便器ちゃん、また落っこちちゃうぞ」ブラカスちゃんが言った。
「うわーん、二人ともありがとー」
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