第二章 放浪

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 男達に様子を見に行くよう命じる声が響くと、十人の男達は駆け去っていった。それから間を置かず、外では銃撃戦が始まった。  クローゼットに隠れていたミカエラにも事の顛末は全て聞こえていた。もしかしたら満かもしれない。自分達も援護ができるかもしれない。そうでないにしても、最大の好機であることは間違いない。  マリンが自分を逃がしてくれたことが幸いした。足首に巻き付けていたシースから中型ナイフを抜き、静かに戸口に忍び寄った。マリンの立て籠もる部屋の戸口の両脇に拳銃を持った男が張り付いている。二対二。自分の存在が気づかれていない分、タイミングさえ合えばこちらが有利だ。  組み合ったらとても敵いそうにない、筋骨隆々の大柄な男と、もう一人はこの世界にそぐわない、馬鹿みたいなスーツ姿の小太りの男。そちらに狙いを定めた。マリンも緊張した表情でこちらの意図に気付き、軽く頷きながら銃を構え直した。  息を整える。刃物で人を殺すのは初めてだった。震える右手に左手を添え、一気に飛び出した。驚愕に目を見開く男と目が合い、その腹に向けて両手でナイフを突き出した。  男の罵声が響き、もう一人の男は驚愕しながらもミカエラを抑え込もうとして、マリンに胴と首を撃ち抜かれて倒れた。  強烈な拳が腹部にめり込み、ミカエラは体を折った。ナイフが床を転がり、悲鳴を上げる間もなく羽交い絞めにされた。
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