第二章 放浪

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 ベティとダニエルが距離を詰め始めた。援護すべく、フルオートに切り替え、残弾をばら撒いた。銃自体が五キロ近くもある重量のせいか、体格のお陰か、連射の反動は予想より小さかった。相手は二方向から絶え間なく猛攻を加えてくる相手に物陰で隠れ続ける事を余儀なくされていた。反撃するか移動でもしようものなら、たちまちダニエルの正確な狙撃でまた一人、命を落とした。ベティも散開し、三方向からの攻撃に対して相手は堪らずホテル内に逃げ戻った。  再装填のもどかしさに舌打ちしながらも満は全力で追撃した。二人を人質にでも取られたら形勢は逆転する。廊下を一目散に逃げる敵の内、勇敢な一人が振り返って散弾銃を乱射してきたが構わず、逃げる連中の背中に全弾を撃ち込んだ。長い廊下を一直線に逃げている分、標的としては申し分なかった。七人の内三人が倒れ、一人はその場で倒れて呻いている。一人は階段で逃げる事を諦め、必死に廊下を走り続けていく。それでも階段に辿り着いて逃げる二人の敵を執拗に追い続ける。最後の弾倉を取り、この銃独特のもどかしい操作で詰めて初弾を叩き込んだ。ダニエルの声が一階から響いてきた。 「ベティ、満を頼む。俺はあいつを始末して物資と退路を確保しておく」  淡々として容赦ない、プロの精兵の声だった。   「久しぶりだな」  追いついた一人を殺害した後、血痕を頼りに最後の一人に追いつくと、自分からナイフと靴を奪った男が階段の踊り場で観念したように座り込んでいた。       相手の驚愕する顔が目に焼き付く。  その顔を銃撃で吹き飛ばし、最上階に向かって駆けた。
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