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だけど覚えているのはそこまで。
気が付いたら私はここにいた。
窓から光は差し込んでいるものの、なぜかとてつもなく薄暗く感じる、スチール製の事務机が置いてある窮屈な部屋。
「…じゃあ、君は同僚や社員の皆から、そんな風に日常的に嫌がらせを受けていたと」
「はい」
目の前に座る中年の男性に、何故今回このような事態になったのかを根掘り葉掘り聞かれたので、私はすべて正直に答えた。
聞かれたこと以外も、補足の意味で事細かく。
だって、誰かに吐き出したい気分だったから。
私の悲しく辛く、理不尽過ぎるこれまでの人生を。
「特に本丸さんが酷かったんです。いえ。表立って、目立つような嫌がらせはしてこなかったけど、表情や声音がホントに冷たくて。他の人が私をバカにしてたのも、きっと彼女が裏で操っていたんですよ」
「ふむ…」
「でも、副社長だけは違いました」
そんな状況の中でも唯一の、幸せな記憶が甦り、私はそこで思わず顔を綻ばせた。
「意地悪な人からさりげなく庇ってくれたり、顔を合わせれば優しい言葉をかけて下さったり。後から知ったのですが、どうやら私の事が好きだったみたいで…」
「だけどそんな風にとても恩がある筈の副社長に、何故あんなに酷い怪我を負わせたんだ?手術後、未だに目を覚ましていないらしいぞ。かなり深刻な状況だ」
「彼にケガを負わせるつもりなんてなかったんです!」
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