現実

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「無言のままブスッとしてんのよね。いつだったか、用を済ませて個室から出たら、扉の前でボーッとつっ立ってんのよ!すっごいゾーッとしちゃった」 「あと、洗面台も、いついつまでも磨いててなかなかどいてくれないですしね」 「強引に隣の台を使っちゃうけどね。だけど例のごとく、手を洗ってる間もベッタリ隣に張り付いてて、気まずくてしかたないから取りあえず世間話するじゃない。でもそれに対しての反応もいまいちで。どうしろっちゅーのよね」 「あ、そうだ。こんな事もあったんですよ。なんか、床を磨く機械があるじゃないですか。あの人何回やっても覚えられないらしくて、先輩スタッフにキレられてましたよ」 「えー?あれってそんなに操作が複雑なの?普通一回やれば覚えない?」 「だから怒られてた訳ですよ。ホント、あんなんでよく就職できたな~と思って」 「事件が起きる直前、若宮さんと本丸さん以外で被疑者と接触したのはあなた方お二人なんですよね?」 そこで部下が割り込むように言葉を挟んだ。 どんどん話が逸れて収拾がつかなくなりそうだったので、いい加減軌道修正する事にしたのだろう。 国内屈指の一流企業の秘書課にも、いわゆる「かしましい」タイプの女性はいるのだなと、内心苦笑した。
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