現実

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「とても説得力のある考察ですね」 「あの人のエキセントリックぶりには小さい時から散々振り回されて来ましたから。それでもある程度の年齢までは「相手はお姉ちゃんなんだし」と考え、必死に引き立てようと努力していたりしたんですよ。だけど『やっぱ無理だわ』と認識した、私にとってのターニングポイントとなった事件がありまして」 「事件?」 「高一の時、初めてできた彼氏を家に連れて来たんですが、後日、『お前の姉ちゃんて超キモくね?』って言われちゃって」 ふ、と短くため息を吐いてから夢乃は続けた。 「彼曰く、『無言でじとーっとガン見してきて全身鳥肌が立った』って事でした。その日姉は休みだったのでいつもにも増してだらしのない格好で、確かにあんなのに凝視されたらギョッとすると思うんですけど、その時はまだ身内を庇う純粋な気持ちが残っていたから、そんな風に言われて思わずムッとして「失礼過ぎでしょ」って言い返したんですよ。そこから大喧嘩に発展して、結局その彼とはすぐに別れる事になりました」 「なるほど…」 「『恋人の家族の悪口を言うような最低な男と離れられて良かったんだ』って自分で自分に言い聞かせていたんですけど、私の初めての恋を台無しにしておきながらその後も相変わらずしれっとマイウェイに自堕落に生きている姉を見ているうちに、どんどんイライラムカムカが蓄積して行って。ある日突然『ああ、やっぱり私こいつのこと嫌いだわ』って確信したんです」
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