秋田犬 信号との闘い

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 なんでもいいから会話をふりながらモフりの手はゆるめない。 「そうですね。2匹飼っている人がいると聞いたことがありますよ。白い子となんか」  飼い主さんがタメになる情報を言ってくれた。 (秋田犬2匹……)  夢のような2頭立てに妄想も広がります。 「犬好きなんですか?」  とんだ犬好きさんは、飼い主んさんによく聞かれます。 「はい、もう大好きで」  そのうち、信号がタイムアウトを知らせます。 (お別れだわ……あっ!)  そのとき、とんだ犬好きさんは気付いたのです。  無表情のはちわれ秋田犬。  身動きひとつせずに撫でられていたと思っていた秋田犬。  その尻尾が、微妙に揺れている!  ほかの筋肉がまったく静止しているのに。尻尾だけがフリフリしていたのです。 「ほら、信号変わったから行くよ」  飼い主さんにうながされ、秋田犬は去っていく。  最終的に、目もあわせてもらえず。微動だにもしなかった秋田犬……いや、それはちがった。 「尻尾だけ、そんなプレイで攻められるなんてーーー!」  また会えることがあっても、きっと同じだろう。  しかし、とんだ犬好きさんは新しい愛の形をまたひとつ学んだのだった。 ※次回、猫が車の下からこっちを見ている。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加