フレンチブルドッグと整形外科

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 と声がけを怠らないのは飼い主さんに不審者と思われないためだ。たぶん間違ってはいないと思う。 「人が好きなんですよ」  よかった。飼い主さんも我が子が可愛いと言われて嬉しそうだ。  私も(おそらく)お犬以上に嬉しい顔しています。  しかし。 「なんか、お犬の顔が、しかめっ面?」  身をゆだねてはいるようだが、あまり嬉しそうに見えない。  なぜ? どうして? こんなにも萌えっとしながら、心ゆくままに撫でているのに。 「はっ、片手ではだめか」  右手はバッグを持っていたが、お犬の求愛とは引き換えにできない。  バッグごときはアスファルトに置いて、両手で首すじワシワシマッサージ攻撃。 「これで堕ちないお犬は……?」  なぜか、ブスッとしているフレンチブルドッグ。 「愛が、届いていない……」  もう少しで陥落できそうではあったが、これ以上この子にかまっていると、通りすがりの犬好きさんから挙動不審の変態に移行してしまいそうだ。  そうすると、飼い主さんに「なんだ、コイツ、気持ちワリ。早く離れろよ」と思われかねない。  タイムリミット、辛いけれど長居は無用だ。  なにか言いたそうな目で見上げるお犬から手を離し。 「お散歩中にすみませんでした。ありがとうございました」     
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