盲導犬 ラブラドールレトリーバー

　見れば、第三者の女性が飼い主さんに声をかけていた。
　目的地が定まらなくてアイメイトが右左キョロキョロしていたのだ。
　なのに呆然と立ち尽くし、お犬を眺めていた……。

（しまったーーー！）

　完全に己のミスである。
　仕事をするアイメイトに声をかけたり近づいてはいけないのは常識だが、視覚障害者である飼い主さんが困っていたら声をかけるのも常識ではないのか！

（犬にみとれて人としての常識を忘れてしまった……）
　犬好きさん失格以前に、人間失格である。
　この無様な様を写されてSNSに挙げられても文句のひとつも言えやしない。

　ひとりと一匹はデパートに入りたかったらしく、それを発見した店員さんが出てきて第三者の女性と入れ替わって飼い主さんとアイメイトを誘導した。
　飼い主さんとアイメイトにとってはよかった。
　しかし、とんだ犬好きは……。

（この罪は、10倍返しだ……）

　申し訳ないが、私になにかあったら二分の一をアイメイト協会に、残り二分の一をオカンと姉で分けてください。身内に若干減るが、なにかあったあとの私にとっては知ったことではない。

　付け加えるなら、平成最後の年である２０１８年、池袋の地下道を歩くと「お声かけキャンペーン」の放送が流れている。