盲導犬 ラブラドールレトリーバー

盲導犬　
　～ラブラドールレトリーバー

　流れ流れてお犬旅。このお話はとんだ犬好きさんがすれ違いざまにお犬様と愛を確認していくという心の成長物語である。

　決して声をかけてはいけない犬がいる。
　お犬と見たらすぐ誘い出すとんだ犬好きさんだが。
　あいつが仕事中の相手と知ったら。
　もう手は出せない。出してしまったら、まるでジャパニーズスキャンダル。
　通りすがりの人々にシャッターを切られ、SNSに非常識人間として晒し者にされるだろう。

　だから、ロックオンしてしまっても、萌えがあふれ出して摂氏85℃の蒸気を脳天から噴出させたとしても、決して近づかない。声をかけない。触るなんてもっての外！

　彼らはお仕事をしているのだ。
　ただの犬好きの欲望のせいで視覚障害の飼い主さんの進路を妨害するとか、歩くということに全神経を集中させているその姿を邪魔しては決してならない。

　踏まれても、汚れても、
　ハーネスに繋いだ信頼が好き。
　嵐にも耐えてきた、公道を歩くペアひとつ。
　あなた（飼い主さん）から私（アイメイト）へ。
　私から（アイメイト）からあなた（飼い主さん）へ。
　送る言葉は悔いのない信頼。
　かけめぐる信頼。