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「なんていったらいいのか……アイオンさまのことを、もっと知りたいんです。警戒して……遠ざかって、アイオンさまのことを知る機会を逃すのは……いやです」
彼を知って日は浅い。彼を知らなかった日々があったことを思い、トゥッツィリアは胸が苦しくなった。トゥッツィリアの知らない彼の日々。知らないでいたことが口惜しい。
トゥッツィリアは顔を上げた。のっぺりとした仮面に、表情は一切ない。
はっと気がついたことがあった。
――私、アイオンさまを。
胸が苦しい。
初恋の思い出をなつかしむときより、ずっと重くて甘い。
――アイオンさまのことが。
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