穏やかなひととき

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 どの顔も「女性」に甘えたがっていた。ひとときであっても、自分が相手をすることによって孤児たちが元気づけられるなら、とトゥッツィリアは彼らの話をよく聞いた。  昼は孤児たちと過ごし、夜は自室で読書をしたり編みものをしたりして、持て余しがちな時間を潰していた。  孤児から怪人の話を聞いたのは、一週間ほど前だ。  修道士の姿をした仮面の怪人が、夜な夜な教会内を徘徊している――きっとあれは墓場からよみがえった亡者で、見つかったらひどいことをされるに違いない。  口々に空想を語る孤児たちの言を、トゥッツィリアがそのまま飲んだわけではなかった。話を聞くよりも先に彼を見かけたことはあったが、妙なひとがいる、と思ったていどだったのだ。孤児たちにそんなふうに噂されていると知り、かえって驚かされた。修道士のなかには、自分に対し厳しい戒律を定めるものもいる。彼の仮面もそういった意味合いのものかもしれない、と考える部分があったのだ。  図書室から借り出していた書物を読み終え、時間を持て余したトゥッツィリアは意を決して散歩に出た――それがついさきごろのことである。  教会の面々は夕餉の後、就寝の鐘が鳴るまでの間祈りを捧げる。祈りの時間、部屋から出ることは許されないはずだった。  ならば自分が出歩いても見咎められまい、とトゥッツィリアは考えたのだ。     
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