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「アイオンさまは、薬草園の管理をなさっておいでですの? さきほど手入れをしておいででしたが」
「管理とまではいかないが、あの一画を使わせてもらっている」
あの薬草園は教会に専門の管理者がいると聞きかじっていた。
「こんな遅くに手入れなんて、大変ですのね」
「色々とやることはあるからな」
「植物の本がたくさんありますが……全部読めるのですか?」
ぐるりと書物の山に視線を投げかける。違うことを尋ねたかったが、いざ目の前にすると口にしづらい。
――なぜ仮面を被っていらっしゃるの?
「まあ、そうだな。読める」
「こちらの本は、すべてお読みに?」
「ああ」
「勉強したら……私でも読めるようになるでしょうか」
「なるさ。なにかをはじめるのに、遅いなんてことはない」
「このまま本を見させていただいても」
「かまわん」
ふたたびアイオンは階下に降り、ややあっておもてに出ていく音がした。
トゥッツィリアは書物のページをめくり続けた。トゥッツィリアの語学力だと読めるものはさほど多くないが、なかにはやさしい内容のものもあり、言葉と言葉の間を想像してつないだ。
書物に熱中すると、いつの間にか戻ったアイオンが真横に立ったこと気がつかなかったほどだ。
気がついたときには、驚いたあまりちいさく飛び上がっていた。
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