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「ご、ごめんなさい……!」
「驚かせてすまない。気に入った本があるなら、持っていくといい。そのあたりのものは、ずっと置きっぱなしになってるものばかりだ」
ほこりを被っているありさまから、アイオンの言葉が事実だとわかる。
図々しいかと気後れしたが、トゥッツィリアは三冊の薄い書物を手にした。やさしい言葉で書かれた薬草栽培の内容は、ゆっくり目を通したいと感じるものだった。
「途中まで送っていこう」
ランタンを持ったアイオンに先導され、来た道を戻った。
広い墓地を横切り、アーチをくぐり、薬草園に出る。
言葉を交わしたせいだろうか、往路よりもアイオンを頼もしく感じていた。また、道を知っているためか、今度は怖さが和らぎ薬草園までの距離を近くに感じる。
ちらっと物置小屋に気を向けると、
「もう誰もいない」
「あ……はい」
のぞき見なんてはしたないことをしたのだ、トゥッツィリアはあわてて前を向く。
「この先はひとりで大丈夫だな?」
道の先にはトゥッツィリアが詰めているべき建物があり、散歩の終わりはすぐそこだった。
「はい、ありがとうございます」
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