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裾の長い外套は修道士たちが身に着けるもので、肩口のフードを彼は目深に被っていた。そこからのぞくはずの顔は、白くのっぺりした仮面に隠されている。しかも手には手袋がはめられている。素肌の一切をその怪人は隠しているのだ。
「どうして……」
夕暮れなどとうに過ぎ、闇があたりを浸食する時刻である。彼に興味緒抱いているおさない孤児たちは、もうベッドに入るよういわれている時刻だ。
暗い薬草園では、月と星、怪人の持つランタンだけが頼りだった。
十分とはいえない光源に浮き上がるような怪人の姿は、トゥッツィリアには物珍しく、また禍々しく、だが好奇心を刺激するものだった。
子供たちのなかには、彼を本気で怪人だと思い怯えている顔もある。
教会のものに彼について尋ねれば、他人への詮索をたしなめられた。怪人について子細がつまびらかにされないことで、子供たちの怯えは加速しているといっていい。
しかし事情があってのあの風体なのだろう、彼は曲がりなりにも修道士だ。おなじく修道院の敷地に暮らしているのだから、危険はないはずだ。
怪人はざくざくと音を立て、薬草園を大股に闊歩する。
苗木を確認し、手袋のまま土をかき、怪人は薬草園の手入れをはじめた。
フードから、するりと一房の髪が垂れる。ランタンの明かりでは、それが金か銀か見極めかねた。髪の色が気になって首をのばし、トゥッツィリアは身をひそめていた柱の陰で目を凝らす。
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