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男子中学生だった俺は、高校での素晴らしい日々に憧れ共学の高校へ入学した。
そして女子との学校生活にも慣れたころ、あの日がやってくるのである。
聖バレンタインディ…
それはおかしな特別な日になった。
朝から、みんながソワソワしている。
それもそのはず今日は2月14日なのである、思春期を迎える若者、胸をときめく学生ならだれもが落ち着かない。ときめきソワソワしているうちの一人が俺だ。
チョコを考えると気が狂いそうなうちの一人でもある。貰うか、貰わないか。本命か義理か、手作りか既製品か。日本中、いや世界中で膨大な量のチョコが動く。人から人へ手渡されるのだ。なんてすばらしい日だ。そして手渡し、いい響きだ。
学生時代のチョコ受け渡しの流れのピークは朝学校へ着いたあたりからだろう、それから昼休み、最後は放課後とおおよそ三つに分割される。
そして今俺は、緊張している。
一日が終わり、今からチョコを貰いやすいと言われている放課後が始まるのだ。
大体の青春漫画、映画では放課後にチョコの受け渡しが行われている。
俺の戦績と言えば、朝なし、昼もなし、そうくればもうもらうのはこのラストチャンスHOUKAGOである。さらに言うと、今目の前にしている下駄箱の革靴の上にチョコはすでに置いてあるはずなのだ。
汗ばむ手、震える足、高鳴る鼓動。
全てを無視して、唱えよう!
「OPEN SESAME?」
目の前にあるのは、通学を共にした革靴だけだった。
おかしいそんな馬鹿な‥‥膨らみきった期待が音もなくしぼんでいった。
ちょっと待てよ、靴の中に何か入っている。これはなんだ?チョコかな?
どうやら丸い形状からチョコエッグのようだ。
「はぁ~なんだよ、こんなしょーもないもんかよ!」
そう吐き捨てた瞬間、下駄箱がけたたましい音をたて揺れ始めた。
地震か?!そう思った次の瞬間、辺りに靄がかかったようになり煙に包まれた。
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