2月14日

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額に違和感を感じ目を開けると十字架を俺に突き立てたバレンタインさんが目の前で顔を真っ赤にしていた。めっちゃ怒っている。外を見ると夜が明けていた。なんと、ふわふわしながら寝ていたようだ。 物凄い剣幕で怒っているが、もう何を言っているのかわからない重そうな十字架をブンブン振り回している。あれに当たったらまずい…真っ赤に充血した目と目が合った。十字架を振りかぶるバレンタインさんがものすごい勢いで十字架をぶん投げた。もちろん、十字架は俺の額を直撃し、次の瞬間体がまた衝撃を受けた。 暗い…なにも見えない、声が聞こえる…また女の子の声だ。次第に視界がはっきりしてきた。 まただ、さっきの不器用な女の子が台所に立っている。 俺はまた幽霊スタイルでその姿を見ている。それから危なっかしい、作業が続いた。 「もう遅いんだから、寝なさい。もう駄目だったら明日既製品のを買えばよいじゃない」女の子のお母さんらしき女性がそう女の子に言う。 「ダメ!既製品じゃだめなの…もう少し頑張るよ、ありがとうお母さん」小さなガッツポーズをしてから女の子は作業を再開した。 また同じ光景じゃん、さっきと全く一緒!怒りつつも女の子の作業を見ていると退屈で寝てしまっていた。目を覚ますと目の前には、突きつけられた十字架があった。次の瞬間体に衝撃が走る、またかよ… 気が付くと台所に立つ女の子、幽霊スタイルの俺。 もう何回目だ、同じ光景をみて寝て起きて十字架で殴られて、何が恋人の守護聖人だよ。これじゃあ呪われてしまったようじゃないか。なんども同じ場面を見続けるのも疲れてきた。 はぁ~すーっと寝ころびながら女の子の近くまで浮遊していくと、「きっと驚いてくれる。あんなにバレンタインに期待してる、きっかけになるはず」女の子は小さく笑って楽しそうだが、手が止まっていた。 なんだよ、こんなに頑張って作ってもらう男はいいな~うらやましいわ~ 女の子の言葉を聞いたのは今回が初めてだった、今まではすぐ寝てしまい殴られて最初に戻るという感じだったので聞いたことがなかったのだ。 それから急にガツンと体が揺さぶられる、目を開くと女の子が小走りで走っている のを見ていた。
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