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 視線は真冬のような冷たさだが、敵意ではない。  カグヒメは一瞬悩む。そして、一度深呼吸をすると思い切って振り返った。  そこには確かに人がいた。男だ。けれどその装束はカグヒメが見慣れた着物ではない。  彼女は咄嗟に一歩後ずさる。  静かに自分を見てくる視線は、やはり冷めていた。逃げようと思いはするが、足は根が生えたように動かない。  硬直しているカグヒメを頭の先から爪先まで眺めると、男はおもむろに口を開いた。 「お前が白狐(びゃっこ)の娘で相違はないな」  有無を言わせぬ尊大な口調だった。声が低いのも相まって迫力がある。  気迫に圧され、首を軋ませながらカグヒメは頷いた。 「我は水神。神々はお前のような者を集めている。――よって、我と共に来てもらおう」 「は?」  唐突に告げられた内容に、思わず胡乱気な声が零れる。言われていることに頭がついていかない。  男は一瞬にして、地面を滑るように、カグヒメの傍らにやって来た。  ずっと上にある顔を見上げる。彼は値踏みでもするかのようにカグヒメを見下ろしていた。そして、訝しそうに目を細める。 「……お前は、本当に白狐の娘か?」 「え……?」  問われた意味がわからない。ついさっき、自分は頷いたばかりじゃないか。     
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