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 行きと同じ神に連れられ、カグヒメは自分の家がある馴染みの森へと帰ってきた。  まだふわふわとした心地でいる。家の近くまでやってくると、カグヒメを見つけた祖父母が駆け寄ってきた。  そして祖母がきつく彼女を抱き締める。 「あぁ、今までどこに行っとったの! 山神様の神隠しにでも遭ったんでないかと心配したでないのっ!」  ――神隠し……。 「とにかく、怪我もないようで。本当にここ三日、どんなに探しても見つからなかったから……。あぁ、無事で良かった……始祖……」  ――私は、カグヒメだってば……。  そう思うが、口にはしない。何度言っても祖父母がこの呼び方を直さないのは分かっている。 「――カグヒメ」  不意に自分の名前を呼ぶ声に目を見開いた。 「あぁ、そうだ。お前の姿が消えてしまったで、お前の母様がな……」  祖母の腕から抜け出し、声がした方を見る。  肌や髪、着物まで、全てが真白な女人がそこに立っていた。  それは紛うことなく、滅多なことでは姿を見せない、カグヒメの母である。 「か……母様っ!」  カグヒメは駆け寄って母に抱きついた。 「カグヒメ……、いなくなったと聞いて肝を冷やしました。無事で良かった……」  しゃがみ込んで、母は優しくカグヒメを抱き締めた。  優しく撫でる手に、心が緩む。  会えたのはいつ振りだろうか。カグヒメは力一杯に母を抱き締め、その懐に顔をうずめた。  ――……。  不意にまた、耳の奥で寝言のように何かが囁く。  一瞬ちりっと、カグヒメの胸の奥で何かが焼けるような感覚がした。しかしそれは、すうっと、まるで眠りに落ちていくかのように消えていく。  それ以降、カグヒメの前に神が現れることは二度となかった。
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