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 どのくらい時間が経ったのか。雲なのか霧なのか分からない、白い靄が掛かった空間をずっと進んでいる。  不意に男は下降を始めた。やがて足下に木々が近付き、地面に降り立つ。そこはどこかの森の中のようだった。自分が住んでいる森とは違う。まだこの森の葉先は青々としていた。  カグヒメはきょろきょろと興味深そうに辺りを見回す。だが、そんな余裕を与えず、男は彼女をどこかに引っ張って行く。 「離せ! 逃げない!」  カグヒメは今度こそ男の手を振り払った。相手は少し驚いたように目を瞠って彼女を見る。しかし、すぐに視線を前へと戻した。 「……集めてるって言ってたけど、何をするんだ?」  男の背中を睨みつけて、カグヒメは訊ねる。向こうは暫し沈黙したのちに、口を開いた。 「人の身では器がもたない。かと言って、(あやかし)どもの器に預けるつもりはない。故に、お前達のような者に白羽の矢が立った」  どうにも要領を得ない回答だ。カグヒメは口をへの字に曲げながら、別の問いを投げ掛けた。 「私達のような者って、どう言うことだ?」  相手は振り返った。その目は据わっている。     
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