1人が本棚に入れています
本棚に追加
昔ながらの漆喰で塗り込められたような壁は、穏やかに町の風景に溶け込んでいる。
静かに佇む建物は所々剥げたり割れたりと、なかなか様になっていて、この町に一層レトロな雰囲気を醸し出すのだ。
映画館を見上げ、被っていた鳥打ち帽を持ち上げると笑いかける。
私の青春は此処にあった。
良い事も、悪い事すら含めて色々あった映画館だ。
映画館と共に生き、共に笑い、共に泣き、共に苦労を分かち合ってきた。
鳥打ち帽を被り直すと、心なしか映画館が笑ったように見えて、込み上げる涙を堪えるようにして中へと滑り込む。
最初のコメントを投稿しよう!