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深々とお辞儀をしていく私に、常連だったお客様が次々に声をかけてくれる。
暖かいねぎらいの言葉や、閉館する事を残念がる声、変わらず経営していてくれなどといった、人情味溢れるものがほとんどだった。
それら全てがとても嬉しいものだったが、だからといって甘える訳にもいかない。
涙は最後まで、とっておくつもりだった――。
ゆっくりと流れるかのような時間は、それでも容赦なく、確実に空色から緋色、紫へと陽を落とし。
訪ねてくれるお客様もまばらとなる頃には、辺りはしっとりと暗闇に包まれようとしていた。
これで最後、本当に最後の日が終わる。
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