第二章・―閉館―

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 最後のお客様を見送って、深々と下げた頭を戻すと、振り仰いで映画館を見詰めた。  変わらぬ事なく、今の今までどっしりと構えてきた。    否、本当は私にも理解っているのだ。    物は不変ではない、むしろ時代の流れに合わせて変わるもので、また新しい物が出来てようやく荷を下ろせるのだろう。    少し寒くなり、肩を震わせて映画館の中へと歩いて行く。  この映画館の歴史に終止符を打つために、最後の客として、映写室へと入った。    背後にある、数在るフィルムの中から目当ての物を探しだすと、映写機にセットする。  この映画は、初めてこの映画館が開かれた時に、初めて放映したものだ。    映写室の中から映画を堪能しながら、走馬灯のように駆け巡る記憶を掘り起こしていく。
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