第二章・―閉館―

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 今までこの映画館と共に、こんなにも沢山の人と触れ合い、思い出を共有し、歩む事が出来たのだから。    フィルムが終わり、映画が終わって、スクリーンが何も映さなくなっても構わなかった。  いつの間にか、留まる事なく溢れる涙を拭いもせずに、映写機を抱きしめて、声を上げて泣いていた。    今日、今夜、この時を以て、映画館は本当に閉館した。  泣きながら丁寧にフィルムを直し、滲む視界を必死に保ちながら戸締まりをしていく。    一つ一つに宿る思い出は、私の内に秘め、映画館の想いを残して歩いて行く。  そうして玄関ホールに辿り着いた私は、映画館にお礼を述べる。
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