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瀬戸内君の席は、私のすぐ後ろ。
私はどきどきしながら、机の間をぬって歩いて来る瀬戸内君を見ていた。
「………っ」
一瞬、目があった気がした。まあ、瀬戸内君の席と、歩いて来る彼の間に私がいたんだから、(そして私はずっと瀬戸内君を見ていたんだから)目があってしかるべき、てな感じではあったのだけど)
瀬戸内君は何故かちょっと驚いたように目を見開いて、それからすぐ視線を逸らして眼鏡をくいって押し上げたんだ。
わぁ、格好良い人は眼鏡をあげる様も格好いいんだな、と思った瞬間、派手な音が教室に響いた。
「お、おい、どうしたんだ!」
「大丈夫か! 瀬戸内! 意識はあるか!」
「眼鏡は……眼鏡は無事だぞ! 割れてない!」
瀬戸内君は眼鏡を押し上げることに気を取られるあまり……机に脚を引っ掻けて、すぐ脇にいた男子の机に派手に突っ込んで転がっていた。
どうやら、頭を打ったらしく、両手で頭を抱え込んで悶絶しているその姿はなかなかに強烈だった。
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