瀬戸内君との、始まり

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「……もう。神崎先生ったら。近くにいたってだけで私を使うんだから」  放課後。私は先生に雑用を頼まれて遅くなってしまった私は、急いで部活に向かっていた。  私の部活である美術部は、そんなに厳しい部活ではないのだけど、絵のコンクールが近いから、出来るだけ長く部活動に時間を割きたいところ。しかも、こうみえて私は美大志望。今回の作品も推薦入試要求のポートフォリオにいれようと思ってたから、特別力入れてたのに。  いくら係の子がさっさと帰っちゃったからって、なんでよりにもよって、私指名するかなあ。みんなには内緒だよって、飴くれたくらいじゃ誤魔化されないんだからね。身長は140ちょっとでも、私だってれっきとした高校三年生なんだから。 「イチゴミルク味で、おいしいけどね……あ、そうだ。近道してこっと」  美術室には渡り廊下を通った方が早い。たまに筋トレしている運動部がいるから普段はあまり使わないけど、今日は遠慮なんかしてられない。  もらった飴玉をなめながら駆け足で渡り廊下を進むと、五月の温かい風が吹き込んできた。  ……三年生になってからもう一ヶ月も経ったのかあ。クラスメンバーは二年の時と変わらないから、あんまり実感わかないけど、月日が経つのは早いな。これじゃあ受験までもあっという間かな。……やだなあ。 「……て、あれ? もしかしなくても、あれって高梨さん、だよね。あんなところで何してるんだろ」
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