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現実逃避をするように、新緑を見上げたら、すぐ近くの木の上にまさかの人がいた。
同じクラスの高梨沙紀(たかなしさき)さんは、すらっと背が高くて学年で一番美人なんだけど、何を考えているかよくわからない、ちょっと不思議な人だ。話かければ、普通に返してくれるのだけど、基本的に寡黙で、みんなでわいわいするより一人でいる方が好きみたい。ミステリアスでクールビューティな人なんだ。
そんな高梨さんが、木の上によじ登って、下にいる私に気づかないまま、一心不乱に遠くを見つめているんだから、さすがにちょっとびっくりした。
……うーん、ますます不思議な人だな、高梨さん。私みたいなちんちくりんがやれば、怪しいストーカーにしか見えないけど、高梨さんがこういうことをしていると、なんか忍びみたいで格好よい気がする。なんでも絵になる美人ってすごいな。今度、作品のモデルになってほしい。
「で、何見てるんだろ。……サッカー部の試合?」
高梨さんの視線の先では、サッカー部が部内で練習試合をしていた。その中には瀬戸内君もいて、思わず足が止まった。
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