雨と犬と私

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 小さい頃は、よくこの公園で遊んでいた。  小さな家なら1軒たつんじゃないかな、と思うくらいの広さで、砂利と砂が混ざった地面を歩くたびに、クシャクシャと音がした。周りは大きな木が壁を作っていて、門の所から見ないと中の様子はわからない。ただ公園の前を通り過ぎただけじゃわからない、けど門から覗き込めばすぐに見つけてもらえる、最高の場所だと思った。  ここへ来るのは何年ぶりだろう。幼稚園の頃は、毎日のようにここで遊んでいた。小学校にあがると、お友達の家に行くか、この公園に来ていた。お母さんが仕事で遅いとわかっている日は、家に帰らずランドセルのままで公園に来ていた。  ――今そんなことしたら、変な人って思われちゃうだろうな。  今、毎日来ているセーラー服はまだ私の体には少し大きくて、袖やスカートの長さが、鏡を見ても不格好に感じる。上着の白い布も汚したくないし、赤いリボンを落としたら大変なことになる。そうやって、私はいつの間にか学校から帰るとまっすぐ家に帰るようになっていた。制服はぶかぶかなのに、毎日、窮屈だと思っていた。  5段のアスレチックは、記憶の中のアスレチックよりだいぶ色あせていた。昔はもっと、白と赤と青と黄色が眩しくて、てっぺんに登ると春の神様になれた気分だったのに。薄汚れたアスレチックのパイプは、月日のせいなんだろうか。それとも、私が春の神様になれなくなったからだろうか。  アスレチックの隣にあるブランコも、覚えているブランコではなくなっていた。鎖と木でできていたはずのブランコは、持つ所が足の骨のような金属になっていて、座るところもゴムのように柔らかかった。ブランコの周りを囲っていた小さな柵もなくなっていた。  ――大きくこいで、そのままジャンプして、あの柵を飛び越えた人が、その日の1等賞だった。  そんな遊びをしていた時の自分は、毎日泥だらけで帰ってきて、腕や膝は絆創膏だらけだった。女の子なのに、とよくお母さんが怒っていたけど、私は痛みより遊びの方を優先していた。毎日汚れる洋服も、当たり前のように洗濯籠に投げ入れて、次の日の夜にはきれいになっていた。いくら汚しても、次に見る時にはきれいになっている魔法の世界。それが当たり前の毎日だった。
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