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『チョコかと思ったら……』
「『今年のトレンドは、ビター』かあ」
こたつに納まり、テレビで流れていた音声を独り言気味にそのまま復唱する彼女に対して、同じくこたつに納まるぼくは「『ビター』ねえ……」と、さながら脊髄反射の様にこちらも同様に復唱で返した。
あと数日もしたら迎えるイベントの為に、巷では各お菓子メーカーや小売店が激しい商戦を繰り広げている。そしてメディアはこぞってそれらを取り上げて、それに踊らされる消費者は各々の思惑を抱きながら贈り物の準備に、またはその贈り物への期待に忙しくなる。
別にこういうイベントが嫌いなわけではない。ぼくだって数年前までは、その踊らされていた消費者の一人だったのだ。『本命』だの『義理』だのという言葉が頭を行き交っては、一喜一憂に忙しかった――立派なイベント参加者だった。
だから別に嫌いなわけではない。全く興味が無くなったわけでもない。ただ、ここ数年は巷がこの話題に彩られていくのを眺める――そのたびにぼくは時間の早さを実感しては、世俗的なイベントとは一線を画した感傷に浸っている。
――今年でもう三年か……。
「はい。ここで問題です――」
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