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最後のヒントを貰ってから、数分程の時間が流れたが――未だに何一つ答えに辿り着く術を得られずに、ぼくは頭を悩ませていた。
夜琥はそんなぼくの様子を見ながら、時折「諦めちゃう?」などと横やりを入れて楽しんでいた。ぼくに負けず嫌いの性質があることを夜琥は知っているはずだ。つまりこの横やりは
――『諦めるな』という激励と同義だった。
――今日は何を話した……?
いつもと違う会話があったのだとしたら、『大人』についてだが――それだけだと、手掛かりとしては弱いように思えた。もっと他に何か決定的な手掛かりは無いか必死に会話を記憶の中から呼び戻すが、めぼしい会話が見つからなかった。それぞれのヒントを結ぶ手掛かりが――何一つ見つからなかったのだ。
どんなに深く推理という思考の深淵に溶け込んでも――違和感を覚える程に見つからない。
――……手掛かりが見つからない?
その違和感に、ぼくはどこか引っかかりを覚えた。そしてそれに縋るかの様な思いで、ぼくはある推理の仮説を――独り言として呟く。
「そうだ……おかしいんだ……最初から。この推理を始めるまで……色についても、プレゼントについても、今日は何一つ話題にすら上がってなかった――」
ぼくの独り言に対しての夜琥の反応は無いと云って良かったが、ぼくはそれでも独り言を続けた。
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