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言葉が上手く出てこなかった。言葉ではどう表現して良いのか分からなくなってしまう程の――唐突に湧き出てきた感情をぼくは堪えることが出来なかった。
「本当に、本当だよ……!」
「さっき……わかったのか?」
「……うん!」
気が付くと微笑みながらその心情を眼に溢れさせていた夜琥の姿は、何よりも美しかった。
その美しさと、自身の心の奥底から押し寄せてくる感情の波に身を任せるように――ぼくは夜琥を抱き寄せた。
「こんなに嬉しくて、幸せだなんて……最高のプレゼントだよ」
「うん! 私も、だよ。最高のプレゼント」
まるで本当にここだけ時が止まったかの様な二人の世界の中で、ぼくは夜琥の温かさを感じ続けた。
少し前のぼくには分からなかったもの――それはこの夜琥の温かさがどんな感情の、どんな想いから来ているのかということ。
でも今ならハッキリと分かる。これが母性であり――『慈愛』というものなのだと。
そして――
――「『守るもの』が出来たときに、きっと私たちは初めて『大人』に――」
夜琥がそう云っていた本当の意味も、今なら分かる気がした。
例年通りに、今年も結婚記念に花を添えるのは――二人の大好きなあのお菓子かと思っていたら……。
「……なあ。プレゼントの答えを改めてちゃんと云う前に――ぼくからも一つ、問題を良いかな?」
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