『チョコかと思ったら……』

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「……それに、夫婦として支え合うとはまた違った、『守るもの』が出来たときに、きっと私たちは初めて『大人』に――『ビター』になれるんだと思う」 「『守るもの』……か。そういうものなのかな」 「うん!」夜琥は歯切れよく返答した。  それから、話は変わり――いつものように他愛ない会話が広がった。  その最中、改めて会話の内容を意識してみたが、本当に取るに足りない内容なのだから面白かった。つい数分ほど前まで、『大人』について僅かながらでもシリアスに話し合っていたとは思えない程だ。でも、それも心地好いぼくたちの日常の一部なのは間違いなかった。  夜琥が途中で「お花を摘みに行く」と云ってその場を一時的に外すまで――凡そ数十分間に亘って、傍から見たら恐らく滑稽であり、ぼくたちからしたら実がなくとも有意義な会話は続いた。  ――そういえば、そろそろ記念日の予定を決めないと。  夜琥が戻ってくるまでの間、ぼくはふと思い出したように考えていた。 『プレゼントは各々で、当日の予定は二人で――』それがぼくたちの記念日についての決まり事だ。そして、プレゼントに関しては別に高価である必要はない。『お互いがお互いに贈り、受け取ることに意味がある』と云うのが二人共通の考えなのだ。     
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