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偶像/ピノキオ
それは、死そのものだった。
夢を見ている。
マイクを手にして、ライトに照らされたステージにルナと二人で立つ。果てがないほど広い会場には、私とルナの色をしたサイリウムがどこまでも、どこまでも、灯っている。
歌って踊る。私とルナの声が、踊りが重なってとける。一つになる。それに、会場を埋める光たちは湧く。
ここが、私の一番大切な場所。ずっと、ずっと、いたい場所。
頭に覚えた鈍痛と、目の周りのひりひりとした痛みに体を起こす。顔を上げて枕元に置いてある鏡を手にすると、そこに映っている自分はひどい顔をしていた。
充血した目の周囲が、少し腫れぼったい。昨日から今日まで、泣き疲れて眠ってしまうまで、ずっと泣いていたせいだ。普段の私だったら、絶対に人に会わないだろう。
鏡の隣にはスマートフォンが置いてある。時刻を確認すると、約束の時間がかなり近づいてきていた。そろそろ準備しないといけない。
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