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ルナはにやにや笑っている。かつての私が言ったことだ。ルナはライブでは安定感があるのに、テレビ収録になると変に緊張するのか、ときどき安定感を損なう。派手なミスではないから誰にも指摘されないけど、その誰にも指摘されないことがまた腹立たしくて、意地悪くそう指摘したことがある。
「『さっきの振り、大きく踊りすぎじゃない?』」
私が言ったのは、音程の指摘に対するルナの反撃だ。実際、そう踊ってしまった自覚はあった。テレビカメラに囲まれて、変に緊張してしまったのが原因だった。でもそれを、ミスを指摘したばかりのルナに指摘されたのが悔しくて、反撃にさらに反撃を返した。
「『さっきの振りはわざと大きく踊っただけだから』」
「『はあ? あれがわざと? ナンセンス―。びっくりー』」
「『ナンセンスなのはそっちでしょ。私服とか小物とか、いちいちダサい』」
「『流行ってるし、雑誌にも載りまくりだし。無知ってこわー』」
一通り、あのときのことを真似してみて、二人して同時に噴き出した。
「歌乃、あのときのこと覚えすぎじゃない!? ウケる」
「そっちこそ。なんだってそんなによく覚えてるの」
「だってさ、すっごいくだらないこと言い合いまくっててさ、最終的には『馬鹿』とか、『脳みそ小学生』とか、子供かってやりとりしててさ。そしたらさ、これまでのぎくしゃく感がお互いどうでもよくなったから」
「うん、そうだったね」
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