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それからは、喧嘩することも増えたけど、いてもいなくても同じという状況は変わった。ちょっと冷静にもなれたから、お互いのパフォーマンスをじっくり見て、お互い、とてもいいパフォーマンスをしていると実感を深めていけた。そのおかげで口喧嘩の回数はぐっと減っていった。
「……ごめん、ちょっと」
黒いマスクを外して、テーブルの上のティッシュを手に取る。笑顔だったルナの表情が、さっと曇った。
「大丈夫?」
「うん、平気。ありがと」
鼻から滴るものを拭った。ティッシュは赤くなった。
「さっきの?」
「うん、今の言葉、今の私の気持ちとは遠いものだったから。……それだけで駄目なんだよね。まだ慣れないな。うっかりしてた。びっくりしたよね。ごめん」
「それは、いいけどさ。…………」
ルナは、泣く寸前の顔をしている。
「あのさ、ルナ」
「……ん」
「私ね、ルナのパフォーマンスが、ずっと好きだよ。ルナにあれこれ言う回数、きっとどんどん減っていったと思うけど。……マネージャーに、二人の初ライブの映像を見せてもらったときにね、やっぱかっこいいなあって思ってさ」
ルナは、天才だと思う。
ちょっとした体の使い方、表情の変化、歌声の響かせ方。どれを取っても、すごく綺麗で見とれてしまう。
「この人と組めて、よかったって、思ったの」
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