偶像/ピノキオ

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「やっほー」  玄関の扉を開くと、ルナが片手を上げて、閉じて開いた。玄関のたたきを踏んだ彼女は、玄関脇の靴箱の上に被っていたスポーツキャップを置く。スニーカーを脱ぎながら、空っぽの方の手に握られていた紙袋を渡してくる。 「お土産?」 「そうそう、おいしいらしいよ、そこ」 「あー」  紙袋の表面に印刷されたかわいいキャラクターと、それにしがみつかれている文字には見覚えがあった。 「今、話題のシュークリーム屋さんだね」 「あ、そうなんだ」 「知らないの?」 「うん、全然。人が並んでるからおいしいんだろうなって思って並んできた」 「ルナって適当」 「まあねー。んじゃ、お邪魔します」  家主の私の横をすり抜けて、ルナは部屋へと入っていく。私もその背中を追いかけた。  リビング兼寝室の中央にある座椅子にルナが腰かける。彼女が着るには大きめなスカジャンを脱いで丸めて、自分の傍らに置いた。 「紅茶でいい?」 「うん」 「じゃ、淹れてくる」  ルナに背中を向けて、小さなキッチンの引き出しから紅茶のティーパックを取り出した。それをカップの中に沈め、ポットからお湯を注ぐ。しばらく待つ間に、紙袋の中の髪の箱を開いて首を傾げた。 「ルナ」     
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