偶像/ピノキオ

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 二人でパイをつつきながら、取り留めのない話をいくつかする。メイクのこと、最近食べたおいしい食べ物のこと、最近使ってよかった基礎化粧品のこと。何度か笑って、いくつか小さな知識を得た。  ……でも、大事なのは、明日だから。だから、話題はどうしても、明日のことに辿り着いてしまう。 「五年、だっけ。私らが出会ってから」  空っぽになった皿についたカスタードクリームを、ルナがフォークの先端でなぞった。 「出会ってからは、五年だね。でもね私、それより前からルナのことを知ってたよ」 「はい? 初耳なんだけど」 「言ってなかったもん」 「えー、あたしの舞台とか見にきたことがあるってこと?」 「そうそう」  ルナはもともとミュージカルを中心に活躍していた子役だった。私は彼女が出演しているミュージカルを、先生に連れられて見にいったことがあった。 「へー、どれ?」 「ややこしい名前をした、とにかくよくわからない舞台」 「あー、あのアヴァンギャルドにも程があるやつでしょ」  具体的な名前を出していないのに、ルナはすぐにそれが何か思い当たったようだ。 「そう。脚本も演出も何もかもが抽象的でわかりづらくて」     
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