偶像/ピノキオ

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 特に当時の私はまだ十歳そこそこだったから、本当の本当に意味がわからなくて、約二時間の公演時間の間、ずっと困惑していたのを覚えている。 「でも音楽はいいでしょ」 「そう。歌とか、ダンスとか、振り付けとか、すごく綺麗で、芸術ってこういうのなんだろうなって思った」 「うんうん、あたしもいっぱい歌えたし、目立つ位置で踊れて、正直、すごく楽しい舞台だった。話の内容は……まあ、意味わかんねーって感じだったけどね。どうだった、あのときの私。天才だった?」 「うん」  すごい子がいると思った。あれが私と同い年だなんて、信じられなかった。  歌とダンスの先生にやや強引に連れていかれたあのミュージカル、最初は面倒で嫌だったけど、でも、あのとき行っておいてよかった。行ってなかったら、芸能スクールという小さな枠の中で一番になったからって、世界で一番になった気でいた私の気持ち、きっといつまでも、あのままだったと思うから。 「いつになく素直じゃん。照れる……」  恥ずかしそうに笑おうとしたルナだったが、その表情はさっと曇る。 「ごめん」 「いいよ。ルナがすごかったから、私、これからも頑張ろうって思えるようになれたんだし。……だからさ、オーディション合格して、これからのことを話すのに事務所に呼び出されたとき……そこでルナと会って、そのときうわって思って」     
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