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「私も気が強いからスクールでもなんとかやっていけてたし、そんなもんだよね。……部屋に戻ってきた事務所の人、すごい顔してたよね」
「これはもう駄目だって顔だよね」
「私たち、二人だけのグループを組もうとしているのに、初対面でそれじゃあ、ね。でもさ、社長は」
「社長はめっちゃ笑ってたよね」
「これは面白いグループになるぞーって言ってたね。うまくいくとは絶対に言わなかったけど」
「うまくいくわけないって思ったもん。歌乃も思ったでしょ?」
「私はルナとうまくやる必要なんてないって思ってた。本音を隠してにこにこするの、得意だったし、アイドルでいられるならそんなの、苦じゃなかったもの」
「アイドル馬鹿」
「そうだね」
「どうしてそんなアイドル馬鹿になっちゃったの?」
「きっかけは、すごく小さなときのテレビかなあ。ソロアイドルの大林愛留ちゃんって覚えてる?」
「あー、はいはい、あたしらが幼稚園生くらいのときに活躍していた子でしょ?」
「その人のパフォーマンスをテレビで見て、それから」
もう十年以上昔のことなのに、あの記憶だけは、ちっとも色褪せない。まるで昨日見たかのように濃く鮮明に、私の中に残り続けている。
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