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太陽なんて見えない場所で、ライトに照らされたステージにたった一人で立つ彼女は、私には、太陽よりもずっと眩しい人に見えた。踊るたび、髪が揺れ、髪も、声も、すべてが彼女のパフォーマンスの一部みたいに輝いていた。彼女のパフォーマンスの時間なんて、せいぜい二、三分だったはず。それなのに、とても、とても長い時間に感じた。人は、あんな風になれるんだ。それならきっと、私だって。……どうすれば、私もあんな風になれるのだろう。……あんな風に、なりたい。そんな夢が、私の中に芽生えた。
「私もあんな風になりたいって言ったら、次の月には芸能スクールに通ってた」
「やば。お父さんとお母さんのやる気すごくない?」
「すごいよ、あの人たち。ちょっと極端なくらい、子供のやること応援しようっていう考えみたい」
「いいねー」
「ルナの家もそんななんじゃない?」
「うちは私の意思とかそんなに気にしてないよ。人気子役の脛かじりたいなーって、そんなん。今のところかかったお金の方が多いみたいだけど」
「たまに聞く話」
「ね。……ねえねえ、歌乃」
「んー?」
「私さ、最初は歌乃が嫌いで嫌いで仕方がなかったんだけどね」
ルナはテーブルに肘をつく。そうして笑う彼女は、言葉に反し、とても優しい顔をしている。
「でも、今はけっこう好きだよ」
「私も」
今は、ルナがいない日常が、ちょっと想像できないくらいに。でも、素直にそういうのは恥ずかしくて、余計な一言が口から零れた。
「……最初は顔も見たくなかったくらいだけど」
「あはは、私も! 初めは目すら合わせなかったよね。同じ楽屋にいるのに、会話ゼロの日だって多かった」
「でもさ、歌とかダンスのことでだけ、喧嘩するんだよね」
「そうそう。『さっきのソロパート、半音ずれてたよ』」
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