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ただ
殺し屋の抱いていた全ての不安は
全くもって無意味だと
何よりも目の前の本人が理解していた
どくん、と
胸の高鳴りを感じる少年は
今、目の前にいる殺し屋と
その彼女から発せられた言葉の整理をして
それをゆっくりと飲み込んだ
色々な可能性を考えて
考えて、考えて、疑って
そうして初めの言葉を口にする
「…おねえさんは、僕が誰かに見られるのが嫌ですか?」
「…嫌だ」
「…触れらるのが、嫌ですか?」
「…嫌だ」
ごくり
今度は少年の喉が鳴った
「…どうして、そう思ったんですか?」
…だめだ
期待は、しちゃ
きっと
でも
だって
もしかしたら
ぐるぐる
否定と肯定が少年の頭で回る
「…君に手を伸ばす彼らを見ていたら、苦しくなったんだ」
ぼそり
殺し屋がつぶやく
「…心臓が、きゅうって。まるで誰かに掴まれたみたいに。それから腹の奥がちりちりして、気づいたら君の手を引いていたんだ」
懺悔するような殺し屋は
まるで様子を伺うように
少年の顔を見た
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