純白のクワイヤ・ボーイ

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 殺し屋が見上げた少年は どこか恍惚とした笑みを浮かべていた  それはそれは 今までに見たこともないような そんな、ぞくりと背を撫でるような微笑みで 息をするのすら、忘れてしまった 「…ふぅん」  目を細める少年は 三日月の光の下 月光を浴びた純白のドレスを纏って 悪魔のような微笑みを浮かべている 「へぇ、そうなんだ」  す、と 少年の細い指が頬にかかる 「…そうか、やっと」  掠れるような 心の底から震える声で少年が呟いた 「ねぇ、おねえさん」  鈴の鳴るような声が殺し屋を呼ぶ 「おねえさんが、あなたが望むなら、『僕』はあなたのものですよ」  いや 例え、望まれなくても この存在が殺し屋の為にあるならば それに勝る喜びなど無い 「僕の身体も、声も、心も、ぜんぶ、ぜんぶ、あなたのものなんです」  あなたが願うなら この身体も 声も 心も 好きにして構わない  他人の視線を嫌うなら あなただけの為に一生を牢につながれよう  歌えと言うならば 声が枯れるまで歌い続けよう  心が離れぬように ずっと耳元で愛を囁いてあげる  あなたの為ならば 僕は、何をされたって構わないんだから
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