純白のクワイヤ・ボーイ

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 全部、あなたのもの そう告げた少年は、殺し屋に迫った 頬に指を這わせ その美しい顔(かんばせ)を寄せる 「さぁ、言って。おねえさんは、僕に何を望みますか?」  望み 殺し屋が少年に抱くものは 「おねえさんの為だけに歌いましょうか?それとも、もう他の誰にも触れられぬよう閉じ込めますか?」  どくん、どくん 少年の心臓の音が 殺し屋の耳元まで届く 「おねえさんの望む言葉を囁きます、おねえさんの好きなことを、おねえさんが欲しいものを、全部、あげますから」  だから どうか この女(ひと)に芽生えた感情が 僕の望んだものでありますように  そう願うような少年の言葉は どこか 「…っ」  どこか 悲しそうで 寂しそうで  その表情は あの物語を読んで聞かせた彼と 重なって見えた
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