純白のクワイヤ・ボーイ

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 三日月の月光が町を照らし出す  ぱらぱら 酒場の客たちが家路につく頃  ただひとり 酒場帰りだと言うのにも関わらず 一切酒の臭いを纏わない客の姿が 銀縁の丸眼鏡が天上の月を仰ぎながら 男は一息 「…ふむ」  何かを考えるように瞳を細めた それからしばらくしてから、人通りの少なくなった大通りを歩く  かつん、かつん 男の革靴が通りに反響する 「…さて、如何したものか」  宵闇に、彼の独り言が流れた 「…カナリアの様子をと来てみれば。はてさて、何故あのような舞台に立っているのか。教会を逃げ出してまで、何故あのカナリアは俗人相手に醜態を晒しているのか」  ぼそぼそ 呟く男の足が止まった 「…否」  ぴたり 足を止めた男の胸元で何かが光る 「…逃げ出したのではなく、攫われたのか」  蒼白い月光を浴びたそれを、男は静かに握った 「愚かな俗人の手によりあの舞台に立たされているのであれば。なるほど」  ざわり、ざわり 潮風がざわめく 「…なれば、その愚か者より救ってやらねばなるまいな」  光る十字架 男の手に握られたそれは 銀色と言うには余りにも錆びついていて まるで数多の罪人の血を浴びてきたが如く 宵闇に鈍い光を放っていた
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