さようならフロイライン

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 それは本当に唐突で 暫くの間、殺し屋の口から言葉が出ることは無かった  白い紙に書かれた丁寧な文字と 人気の無い部屋と 酷く痛む身体と 鼻をつく乾いた血の臭い  呆然とただ立ち尽くす殺し屋 そんな彼女が我に返ったのは 日が沈み 遠くの海で開いた花火が弾けてから  いつか 少年と話したそれが今夜だったことを思い出して 不意に顔を上げた  窓の外で光るそれは 人に言わせればさぞ美しいのだろうが 今の殺し屋には何も感じることが出来なかった
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