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放課後の学校、人がほとんどいない廊下を一人の少年が走っていた。
「はぁ…はぁっ…」
息を切らして、走る。左脇に何か小さな小包のような物を抱えている。
「はぁ…あぁっ…クソッ…!」
何かに苛立ちながらも、少年は走るのをやめない。
(なんでだ…?なんで、こんなことになっちまってんだよっ!?)
抱えている小包からは、ピッ、ピッ、ピッと規則正しい電子音が聞こえる。
「なんで、俺が爆弾解除なんかしなきゃいけねぇんだよーーー!!」
少年の悲痛な叫びは、長く続く廊下に響いた。
ーーーーーー
遡ること20分前。
2月14日、今日はバレンタインデーである。この日は、男女問わず、少し甘い雰囲気にソワソワする日である。
ここの、とある高校でもそれは例に漏れていない。この少年も″もしかしたら″の期待を持っていた。九割方無理だと諦めてはいるが、それでも少し長く学校にいてしまうのは、男の悲しい性というものだろう。
少年は、自分の教室を恐る恐る覗き見る。中には誰もいなかった。
実は少年は放課後、少し教室を後にしていた。この時間まで、誰も自分にチョコを渡されなかったが、恥ずかしくてできないのかもしれないという切なる希望にかけて、誰もいない放課後ならばと、その子のために学校をぶらついていたのだ。
少年はそそくさと自分の机に駆け寄る。
(机の上にはない…。てことは、中に入れてるのか…)
そもそも、貰えていないという発想は少年の頭には毛頭ないようだ。
意を決して、少年は机の中を勢いよく見た。すると…
「あった……」
自ら机の中には絶対入れた覚えのない箱が少年の目に飛び込んだ。
「あった…あったぜ!!マジかよ!!あっちゃったよーー!」
少年は嬉々として、飛び上がる。端から見れば変人だが、今は誰もいない。少年は大いに喜んだ。
落ち着いて、机の中から箱を取り出す。小さな長方形の茶色の箱に、赤いリボンがあしらっていた。
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