チョコ?爆弾?

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「オスミウム、クリプトン、ジルコニウム、ヨウ素、ウラン…頭文字を合わせたら…お、く、じ、よ、う…。屋上!!」  箱を抱えて少年は理科室を飛び出し、屋上まで全力疾走で向かう。通り雨だったのか、外の雨はもう止んでいた。  少年の通う高校では、屋上は通常立ち入り禁止となっている。なので、屋上への扉は鍵がかかっており、職員室で管理されている。だが、 「開いてる…」  扉は少し開いており、目の前に立つ少年に風を送っていた。  時限装置はもう5分を切っていた。この先になにが待ち構えているか不安ではあるが、少年は勢いよく扉を開けた。 「えっ…」  少年の目には、先程の通り雨のせいでほんの少しの水溜まりがある中で、一人佇んでいる少女がいた。髪は後ろでポニーテールにしており、白衣のポケットに手をいれ、空を見上げていた。その少女こそ、これまでの問題の回答に少年を導いてくれた、クラスメイトの少女だった。 「おっ。やっと来たね」  少女は少年の方を見ると、嬉しそうに笑った。 「えっ、なんでお前が…」 「記憶力だけは良い君のことだ。きっと問題を解いてくれると思ったよ。まぁ、もう少し早いかとも思ったがね」  少女はツカツカと少年の元まで歩み寄り、 「さぁ、箱をこちらに」手を出した。 「えっ、いやこれは爆弾で…!」 「爆弾?…アッハッハッ。違うよ、これは私が用意したものだぞ?手紙にも爆弾なんて一言も書いてないはずだが?」 「あっ…」  少年は手紙を確認する。確かに時限装置としか書かれておらず、爆弾などという物騒な文字は1つも書かれていなかった。 「まったく、君は素直なやつだな」 ケラケラと笑う少女の前で少年はヘナヘナと座り込んだ。 「紛らわしいんだよ…あんな形の物、机に入って、タイマーなんてついてたら爆弾って思っちまうよ…」 「想像力が豊かだな、君は」 少女は箱を手に取り、白衣のポケットからニッパーを取りだし、残り2本のコードの一本を切った。すると電子音が止まり、タイマーも残り時間を2分35秒と示し、役目を終えた。
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