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* * * * 外は冷たい風が吹き、その風に揺らされた葉の擦る音がまるでコソコソと話をしているかのよう。 暗闇の中に漂う木々達の内緒話は少年にとっては眠りの妨げになった。 内緒話が気になり眠れない少年は、 暖かみのある薄暗い廊下をヒタヒタと静かに歩いて行く。 ある一室のドアの前、背伸びをし自分よりも背の高い取手に手をかけゆっくり開けると、 目の前には大きな背中が映った。 大きな背中は振り返り、少年を優しく抱き上げる。 空を飛んだかと思ったら、すぐに視界は元に戻り気づくと父の膝の上だった。 『…わぁ』 父は合わせた両手をゆっくり開くと ガラスで出来ているのだろうか、うっすらとピンク色をした花の蕾を見せてくれた。 微かに光るその蕾に少年は幼いながらも 美しさを感じていた。 『ハロー、イリス』 父がまるで命を吹き込むかのように、 優しく声をかけた。 イリスと呼ばれたガラスの蕾はゆっくりと まるで目覚めるかのように開いた。 『ハロー、マスター』 これが、僕とイリスの出会いだ。 * * * * 「3人目を受けよう。時間は正午だ」 〈承知しました。ではクライアントに連絡致します。9:00より綾部様宅へお伺いください。 夜は18:00より梨花様とお食事です。 場所はメールします、遅れないようにと伝言がございます〉 「…わかってる」
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