31人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「さっきも言ったように、連中は『出現』した後、しばらくはボンヤリしてるんだよ。だから、ハッキリするまでは、道なりに歩くだけなんだ。まあ、個体差があるから、すぐにシャッキリする奴もいるがな」
戸惑ったように辺りを見回す女性が、青年の視界に入った。あっと声を上げる間もなく、老人は、その頭を撃ちぬく。女性は崩れ落ち、人ごみの中に消えて行った。
「いや、だから、僕が言ってるのは、どうしてこんなに大勢歩いてきているのか? ということです。いつもじゃない、とすると、一体どうして?」
老人は、マッチを壁に擦りつけると、煙草に再び火を点けた。
「いつもじゃない状態になった、ってことだろうな」
「……どういうことですか?」
「ここには通信機の類はない。連中に見張り台を乗っ取られた時の為の用心にな。だから、向こうで何が起こってるかなんてのは判りっこない。
だから、まあ――」
下からの銃撃音が再開した。老人も弾を装填しながら、七発撃つ。
「想像する事しかできん。まあ、当たってるだろうけどな。新兵、連中の着ている服を見ろ」
青年は目を凝らす。
「さ、様々な服を着ています。スーツ、Tシャツ、コート、民族服、軍服、ええっと……」
「綺麗な服だろう?」
「は?」
最初のコメントを投稿しよう!